最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part1 褥瘡(じょくそう)はどうしてできる? どう治す?褥瘡って何? 発生のメカニズムは?

2023年2月更新(2016年6月公開)

 褥瘡は一般的には「床ずれ」と言われます。寝たきり状態などになると、体重によって圧迫されている部位の血流が滞り、皮膚の一部が赤い色味を帯びたり、ただれたり、傷ができてしまいます。これが褥瘡です。重篤なものでは筋肉や骨まで及ぶものもあり、ときには生命に影響することもあります。
 高齢者施設などでは「デクビ」と呼ばれているところもあるようです。これは「Decubitus ulcer」の略ですが、やはり正式名称である「褥瘡」という言葉を使ったほうがよいでしょう。
 褥瘡は、以前は「褥」と表記されていましたが、現在は「褥」の表記が一般的です。「創」は「切りキズ」などの「キズ」を、「瘡」は内部からの要因による壊死や痂皮などの「できもの」を意味します。褥瘡を単なる「創(キズ)」としないで、「瘡」と表記することになったのは、褥瘡の成り立ちに意味があるからです。皆さんが目にしている褥瘡を見るとわかるように、褥瘡はさまざまな形態と状態で成り立っており、その病態は非常に複雑です(図1)。的確なアセスメントをして、科学的根拠に沿ったアプローチをしていかないと難治化してしまいます。
 日本褥瘡学会では、褥瘡を次のように定義しています。
 「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。」(日本褥瘡学会、2005)
 つまり、外力がかかることで骨によって圧迫された組織が障害された状態が褥瘡です(図2)。さらに、圧迫には垂直方向に圧縮する力だけでなく、「引っ張り応力」「せん断応力」といわれる圧力がかかっています。それらによって組織に「ずれ力」がはたらき、組織障害が助長されるのです(図3)。
 褥瘡は、単なる阻血にとどまらず、4つの機序が複合的に関与するものと考えられています。それは、①阻血性障害、②再灌流障害、③リンパ系機能障害、④細胞・組織の機械的変形、4つです(図4)。
 阻血性障害では、外力によって微小血管が閉塞して組織が阻血壊死に陥ります。そして、一度途絶した血流が再開通したときに、生体炎症反応が起こり、組織が障害される再灌流障害が起こります(図5)。

図1 さまざまな形態・状態(色・性状)の褥瘡

図1 さまざまな形態・状態(色・性状)の褥瘡

壊死組織を伴う仙骨部褥瘡。滲出液が多く、創縁の浸軟と創周囲の発赤を伴う感染の状態

図1 さまざまな形態・状態(色・性状)の褥瘡

中央に黄色壊死を伴う仙骨部褥瘡。ぬめりを帯びた滲出液と浮腫状の肉芽組織を伴うクリティカルコロナイゼーションを示唆する状態

図1 さまざまな形態・状態(色・性状)の褥瘡

発生後間もない仙骨部褥瘡。一見浅い褥瘡に見えるが、創周囲の発赤や熱感を伴い、障害の深さが特定できない急性期褥瘡

図1 さまざまな形態・状態(色・性状)の褥瘡

尾側にポケットを伴う仙骨部褥瘡

図2 局所における褥瘡発生の機序

図2 局所における褥瘡発生の機序

図3 圧迫によるいろいろな力

図3 圧迫によるいろいろな力

図4 褥瘡発生のメカニズム

図4 褥瘡発生のメカニズム

日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:18.より引用

図5 阻血性障害のメカニズム

図5 阻血性障害のメカニズム

切手俊弘:はじめての褥瘡ケア.照林社,東京,2013:7.より引用

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