最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part6 褥瘡(じょくそう)を治すための基本的な知識急性期褥瘡は原因を除去して、ドレッシング材を貼って経過をみよう

2023年2月更新(2016年6月公開)

 すでに述べたように、急性期褥瘡は、褥瘡発生から1~3週間のものをいいます。急性期褥瘡は状態が不安定で、実際にどこまで深く損傷が及んでいるかがわかりません。特に、「深部損傷褥瘡(DTI)」との鑑別が難しいと言われています。DTIは、最初は軽症に見えますが、時間が経つにつれて深い褥瘡へと変化します。
 急性期の褥瘡を発見したときは、局所治療に入る前に褥瘡の発生原因を追求し、その原因を取り除くことが必要です。原因としては、病的骨突出、関節拘縮、栄養状態、浮腫、多汗、尿・便失禁などの個体要因が考えられます。これらを除去しないで局所治療を行っていても褥瘡はいっこうに改善しません。むしろ急に悪化することもあります。
 そのため、できるだけこまめに注意深く創部を観察しつづける必要があります。発赤があっても不透明なドレッシング材を貼付してしまうと変化が見えません。『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では、「創面保護を目的として、ポリウレタンフィルムや真皮に至る創傷用ドレッシング材の中でも貼付後も創が観察できるドレッシング材を用いてもよい(推奨度C1)」となっています。ポリウレタンフィルムを貼付して創部の観察をしている急性期褥瘡を図1に示しました。
 貼付する際には、貼付部位を洗浄して皮膚を清潔にします。そして、急激な変化があればその場で交換することが大切です。交換頻度のめやすは1週間です。創の周囲は脆弱になっていることが多いため、ドレッシング材の交換時には皮膚の剥離に十分に気をつける必要があります。
 もう一つ急性期褥瘡で大事なのは、適度な湿潤環境の保持です。これは前項の湿潤環境下療法(moist wound healing)のところでも述べました。適度な湿潤を保てるドレッシング材を貼付し、外用薬としては創保護効果の高い油脂性軟膏などを用います。酸化亜鉛、ジメチルイソプロピルアズレンなどを使ってもよいでしょう。あるいは、スルファジアジン銀のような水分を多く含んだ乳剤性基剤の軟膏を用いてもよいことになっています。『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では「推奨度C1」になっています。

図1 急性期褥瘡にポリウレタンフィルムを貼付しているところ
3M™テガダーム™トランスペアレント ドレッシング
(スリーエム ジャパン)

図1 急性期褥瘡にポリウレタンフィルムを貼付しているところ

日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:45.より引用
(写真提供:貝谷敏子)

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