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Part9 褥瘡(じょくそう)を治すために必要な栄養と痛みの知識

栄養状態の悪い患者は褥瘡(じょくそう)が治らない?

 褥瘡治癒の原理にのっとって適切な外用薬や創傷被覆材を使用していても、なかなか褥瘡が治らないことを経験されている方も多いのではないでしょうか。「治りにくい」褥瘡の原因の1つに「栄養状態の低下」が考えられます。

 褥瘡予防のための、そして褥瘡発生後の栄養管理の基本は、低栄養の改善です。そこで、まず栄養状態のアセスメントが必要になります。アセスメントの流れを図1に示しました。

 栄養状態の指標としては、以下の項目(表4)を用いてもよい(推奨度C1)とされています。

図1 栄養管理の進め方

図1 栄養管理の進め方

表4 栄養状態の指標

  • 血清アルブミン(Alb)(炎症や脱水がない場合)
  • 体重減少率
  • 食事摂取率
  • MNA®(mini nutritional assessment)(高齢者の場合)
  • COUNUT(controlling nutritional status)
  • 主観的包括的栄養評価(SGA:subjective global assessment)

 血清アルブミン値は、3.5g/dL以下では褥瘡発生リスクが高いとされています。

 栄養状態のスクリーニングのツールとして一般的なのはSGA(subjective global assessment:主観的包括的栄養評価)です(図2)。SGAは、患者に対する聞き取りによって簡単に栄養状態を評価できます。しかし、これはあくまでも主観的な評価であるため、SGAだけでなく、生化学検査や他の栄養情報と組み合わせて評価するほうがよいでしょう。また、高齢者用のスクリーニングツールであるMNA®も有効なツールです(図3)。短期間での栄養スクリーニングが可能とされています。

 褥瘡発生前の低栄養状態(protein energy malnutrition:PEM)の原因としては、前項で紹介したサルコペニア、フレイルの他、ロコモティブシンドロームが挙げられます。ロコモティブシンドロームとは、筋肉や骨、関節、軟骨、椎間板などの運動器の障害によって運動機能の低下を来している状態です。低栄養状態は、マラスムス、クワシオルコル、マラスムス・クワシオルコル混合型の3型に分類されます。

図2 SGA(subjective global assessment:主観的包括的栄養評価)

図2 SGA(subjective global assessment:主観的包括的栄養評価)

日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック‐第2版.照林社,東京,2015:135.より引用

図3  MNA®(mini nutritional assessment)

図3 MNA®(mini nutritional assessment)

 ガイドラインでは、低栄養患者の褥瘡予防に対して、「タンパク質・エネルギー低栄養状態の患者に対して、疾患を考慮したうえで、高エネルギー、高タンパク質のサプリメントによる補給を行うことが勧められる推奨度B)」としています。

 NPUAP/EPUAPガイドラインによると、褥瘡予防の場合の1日の必要栄養量は、少なくとも「現体重(kg)×25~30kcal」とされています。また、タンパク質は栄養リスク、あるいは褥瘡発生リスクがある場合は「1.25~1.5g/kg/日」が目安になります。一般的な必要量を投与した場合は、維持水分量「25~40mL/kg/日」とされています。

 栄養補給のルートは、大きく経管栄養と静脈栄養に分けられます。経管栄養というのは、鼻から管を入れて胃内に栄養剤を入れる経鼻経管栄養法、胃や腸に直接管をつなげて栄養補給を行う経腸栄養法などのことで、何かと話題のPEGは「経皮経内視鏡的胃瘻造設術:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy」のことで、内視鏡を使って胃瘻を造る方法です。

 静脈栄養は、中心静脈栄養と末梢静脈栄養に分けられ、いま特定行為として話題になっているPICCは「末梢挿入式中心静脈栄養:peripherally inserted central venous catheter」で挿入部位は末梢ですが、カテーテルの先端は中心静脈留置になります。

 静脈栄養か経腸栄養かの選択は、図4に示したデシジョン・ツリーを使います。栄養療法の第一選択は、あくまでも「経腸栄養」です。原則は、「腸が機能している場合は腸を使う」ことです。経腸栄養は静脈栄養に比べて生理的であり、消化管本来の機能である消化吸収、あるいは腸管免疫系の機能が維持できるのです。

図4 栄養療法のデシジョン・ツリー

図4 栄養療法のデシジョン・ツリー

井上善文:栄養療法の選択.日本静脈経腸栄養学会静脈経腸栄養ハンドブック(日本静脈経腸栄養学会編),p169,2011,南江堂より許諾を得て転載

 それでは、具体的にどのような栄養補給を行っていくとよいのでしょうか。ガイドラインで「推奨度B」として勧められているのは、「基礎エネルギー(BEE)の1.5倍以上の補給」と「必要量に見合ったタンパク質」です(表5)。

表5 褥瘡患者のエネルギー・タンパク質の補給量のめやす(ガイドラインの比較)

※幅が広い表は横にスクロールできます
  褥瘡予防・管理
ガイドライン
(日本褥瘡学会)
NPUAP/EPUAP
ガイドライン 
備考 
エネルギー BEEの1.5倍 30~35kcal/kg/日  
タンパク質 必要に見合った量 1.25~1.5g/kcal/日
  • 補給エネルギーが少ないと、体タンパク合成が低下
  • 高齢者では腎・肝機能低下を確認
  • 創傷治癒遅延時NPC/N=80~100

日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京;2015:144.より引用

 褥瘡患者の栄養管理で、もう1つ重要なのが特定の栄養素の補給です。中でも「亜鉛」は創傷治癒を促進することがわかっており、適正な補給が必要とされています。NPUAP/EPUAPガイドラインでは、亜鉛欠乏症がみられる場合は、40mg/日以上の投与が勧められています。しかし、創傷治癒に有効な亜鉛摂取量についてはエビデンスがないことから、日本人の食事摂取基準(2015年)推奨の7~9mg/日がとれているかどうかを確認して不足分は補うこととされています。

 また、アルギニンは侵襲下での条件付き必須アミノ酸で、タンパク質、コラーゲンの合成促進、血管拡張作用、免疫細胞の賦活化などの効果が期待されています。アルギニンを含んだ栄養補助食品の摂取によって褥瘡治癒が進んだという報告もあります。

 その他、コラーゲン加水分解物の補給によって褥瘡治癒促進効果が報告されており、現場レベルでは各種サプリメントの補給が進んでいます。

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