Part5 褥瘡(じょくそう)を防ぐために重要な体圧管理褥瘡予防のためのポジショニング:座位
2023年2月更新(2016年6月公開)
座位時の基本は「90度ルール」です。これは、股関節・膝関節・足関節をそれぞれ90 度に維持することです。この姿勢は、座面に対する臀部の接触面積を最大に広げるとともに、人の身体に備わっている天然のクッションと言われる殿筋を利用して坐骨や尾骨部の部分圧の上昇を避けることができます。
そこで重要になるのが、アライメントの評価です。図1に示すように、正面はもちろん側面からも、場合によっては高い位置(頭のほう)から観察することも重要です。骨盤の位置が前後することやねじれることが、座位姿勢を大きく変えることになるからです。骨盤の倒れは「前座り」といわれ、いわゆる「ずっこけ座り」になります。骨盤のねじれは、横倒れなどに影響します。
90度ルールを維持し座り続けるためには、腹筋や背筋が必要で、結構体力が必要になります。高齢患者等では体力の問題もあり、この姿勢を維持することはなかなか難しい面もあります。そこで、解剖学的にも必要とされる姿勢を維持し、褥瘡にならない状態をもたらすためには、仙腸関節へのアプローチを意識することが重要になります。
図1 座位の観察
骨盤は、脊柱(背骨)との関係が密接です。骨盤が広がると脊柱も曲がり、逆に脊柱が曲がると骨盤も広がるといった相関関係にあります。そこで、解剖学的に必要とされる座位姿勢を安楽に維持する介入方法として、骨盤が広がらないようにクッションを使用する方法があります。両手で左右からお尻を押し締めるイメージです(図2)。
車椅子に座っている場合には、上肢の動きを邪魔しないように、小さなクッションを挿入します。両側に挿入してもよいですし、片側に倒れる傾向がある場合には、倒れる側への使用でも効果大です。サイドガードがない、ベッド上端座位や椅子に座る場合には、座面に「逆ハの字」の形で小さなクッションを置き、臀部を落とす座位姿勢が有効です(図3)。
座位姿勢の安定は、脊柱の曲がりを抑制するため、尾骨の飛び出しもカバーし、座位姿勢で課題となる尾骨部圧の上昇を抑えることになります。坐骨部の部分圧迫は、座面クッションを使用することが大切ですので、何も使用しない状態で座ることは避けなくてはいけません。
図2 仙腸関節を意識した介入
図3 端座位の安定を図るための介入
「逆ハの字」の形にクッションを入れて座る