最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part11 在宅の褥瘡(じょくそう)患者にどうアプローチする?在宅で褥瘡患者をみる場合の基本

2023年2月更新(2016年6月公開)

こんなこと知りたかった!在宅で行う看護ケアの“コツ”と“わざ”
在宅で褥瘡をつくらない体位変換のやり方:小枕法を在宅で行う

 病院であろうと在宅であろうと褥瘡予防・管理の基本原則は同じです。しかし、在宅では、病院で使えるような医療機器を手軽に使うことはできません。マンパワーも限られていますから、例えば体位変換を頻回に行うことも難しいでしょう。そして、体圧分散マットレスやドレッシング材など、保険がきかないものを使う場合には、患者負担になってしまうことも配慮する必要があります。何より在宅では、患者本人と介護する家族が日常的に褥瘡管理ができるようにサポートすることが最も大切です。それらのことを踏まえたうえで、在宅で褥瘡予防・管理を行うポイントについて考えてみましょう。

1.褥瘡の予防

 在宅では、ケアギバーである家族やホームヘルパーがキーパーソンになります。褥瘡の発生を見つけるのもこれらのキーパーソンであることが多いでしょう。そこで、皮膚の観察方法や発赤の見分け方などを教育する必要があります。発赤こそが皮膚の状態チェックのポイントになります。
 在宅ケアの良否を決定づけるのは、ケアマネジャーの判断です。そこで、ケアプランに積極的に褥瘡予防の手立てを組み込んでもらうようにします。褥瘡予防のためには、適切な体圧分散用具の選択と使用が不可欠です。在宅で使えるマットレスなどの福祉機器を貸与する制度も利用できます。そのためにも、ケアマネジャーとの綿密な打ち合わせが必要になります。褥瘡予防・管理を円滑に行う方法を表1に、褥瘡予防の手順を図1に示しました。

表1 褥瘡予防・管理を円滑に行う方法

①ケアプランに必ず褥瘡予防を入れ込む ケアマネジャーは家族から皮膚の状態を聞き取る。褥瘡の予防には看護者が主体となって積極的に取り組む
②勘や経験に頼らずケアの根拠をもつ リスクアセスメントスケールや簡易体圧計などの使用によってエビデンスを示す
③行ってはいけないケアを理解しておく 円座の使用や骨突出部のマッサージなど禁忌となっている方法を理解する
④第一発見者はケアマネジャー、家族、ヘルパー 日常皮膚を観察することが多い家族やケアマネジャー、ヘルパーなどが褥瘡の前兆を発見することが多いため、指導を的確に行う
⑤発赤を見落とさない “びらん” が生じる前のサイン“発赤” を見落とさないように家族の指導を行う

日本褥瘡学会編:在宅褥瘡テキストブック.照林社,東京,2020:3-4.を元に作成

図1 褥瘡予防の手順

図1 褥瘡予防の手順

図1 褥瘡予防の手順

日本褥瘡学会編:在宅褥瘡テキストブック.照林社,東京,2020:3.より引用

2.褥瘡の発生後

 褥瘡が発生してしまったら、主治医に相談し、訪問看護師、ソーシャルワーカー、理学療法士、薬剤師、栄養士、介護職など多職種連携のもとにケア体制を敷きます。
 褥瘡ができてしまうと創部にばかり目がいきがちになりますが、本当に必要なのは、圧迫・ずれの除去、皮膚の清潔、栄養などの生活環境を整えることです。在宅では特に療養生活環境の調整を第一に考えましょう。
 創の局所治療・ケアの原則は変わりません。創内・創周囲の洗浄を行って清潔にし、創を湿潤状態に保つことが必要です。褥瘡発生後のケア手順を図2に示しました。
 在宅では、高価なエアマットレスやドレッシング材などの医療機器は、なかなか使えないことが多いでしょう。在宅で利用できる福祉機器や、社会・人的資源を有効に使えるような調整が必要です。そのためにも、ケアマネジャーやソーシャルワーカーと相談して、療養者や家族が自分たちで行える褥瘡管理の体制をつくることが大切です。
 在宅での褥瘡管理を進めるためには、家族・ヘルパーへの教育・指導が重要であることは前述しました。具体的な指導内容を表2にまとめました。

図2 褥瘡発生後のケア手順

図2 褥瘡発生後のケア手順

図2 褥瘡発生後のケア手順

日本褥瘡学会編:在宅褥瘡テキストブック.照林社,東京,2020:5.より引用

表2 在宅での褥瘡管理の指導ポイント

①圧迫の除去
  • 褥瘡予防・治癒促進・再発予防のすべてにおいて外力の除去が重要
  • 状態に適した体圧分散用具を選択し、適切に使用する
  • 体位変換スケジュールを計画し体位変換を行う
  • 頭側挙上は30度までとする
  • やむをえず45度以上の頭側挙上を行う場合はできるだけ短時間とし、二層式エアマットレスを使用する
②栄養摂取
  • 日常の栄養摂取状態をアセスメントし、適切な摂取経路で必要栄養量を摂る
  • 家族・ヘルパーに栄養指導を行う
  • 必要時は給食サービスを行う
  • 経管栄養のために頭側挙上時間が延長し仙骨・尾骨部にずれが生じるときは、半固形状流動食に変更する
③スキンケア
  • 入浴・清拭時は低刺激性石けんを用いて過度に皮膚を擦らない
  • 入浴・清拭後は保湿外用薬を使用して皮膚の乾燥を防ぐ
  • 入浴後の水分を除去する際はやわらかいタオルで押さえ拭きする
  • 皮膚を過度に擦ったりドライヤーで乾燥させたりしない
④排泄ケア
  • おむつを用いる場合はADLや排泄物の量・性状に適したものを選択する
  • 持続する下痢や水様便のときは医師(または専門の看護師)に相談する
  • 排泄物から皮膚を守るため撥水性皮膚保護剤を使う際は量・回数に留意する
  • 排泄物で汚染された創を発見した場合は家族と職種間で話し合う

日本褥瘡学会編:在宅褥瘡テキストブック.照林社,東京,2020:8-9.を元に作成

「Part11 在宅の褥瘡患者にどうアプローチする?」の資料をダウンロード

会員登録(無料)をすると、各章の勉強会等で使える
便利な要約版資料がダウンロードできます。

閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる
閉じる