Part7 褥瘡(じょくそう)治療・ケアのカギを握るドレッシング材・外用薬の使い方これだけは知っておきたい ドレッシング材の選び方
2023年2月更新(2016年6月公開)
ドレッシング材は「創における湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材をいい、従来のガーゼは除く」と定義されています(日本褥瘡学会)。ドレッシング材は、創傷を被覆することにより湿潤環境を維持して創傷治癒に最適な環境を提供します。現在、わが国で薬事上認可されている皮膚欠損用創傷被覆材の医療機器分類を表1に示します。
ドレッシング材には適応に応じて以下の6つの役割があります。①創面保護、②創面閉鎖と湿潤環境、③乾燥した創の湿潤、④滲出液吸収性、⑤感染抑制作用、⑥疼痛緩和、です。褥瘡の治癒過程に沿って、創の収縮や滲出液の減少に応じて適宜ドレッシング材を選択していくことが必要になります。
具体的には、前述の①創面保護、②創面閉鎖と湿潤環境、③乾燥した創の湿潤、④滲出液吸収性は、創傷被覆材の材料により使い分けます。⑤感染抑制作用のためには銀含有創傷被覆材を用います。⑥疼痛緩和は、湿潤環境を保持することで効果が得られます。さらに、ソフトシリコン粘着剤のドレッシング材は、除去時の疼痛軽減をもたらします。
『褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)』では、感染に対する銀含有ドレッシング材の有用性について以下のように言及しています。
CQ2 感染を有する褥瘡に銀含有ドレッシング材は有用か?
推奨文 感染を有する褥瘡に対して、銀含有ドレッシング材の使用を提案する
推奨の強さ 2D
感染を有する褥瘡に対して銀含有ドレッシング材を使用することは、感染制御効果を積極的に支持するものではないものの、ランダム化比較試験において創傷治癒の促進が認められていることから推奨するものとされました。
ドレッシング材は数日にわたって使用できることから、医療スタッフの労力の軽減につながるため、うまく使いこなすことが必要です。それぞれの役割に応じたドレッシング材の種類と主な商品名を表2に挙げました。
表1 創傷被覆・保護材一覧(市販製品)
*本表は販売名で示したため商標登録マークは付けていない
医療機器 分類 (薬機法) |
使用材料 (業界自主分類) |
販売名 | 会社名 (製造販売元/販売元) |
特徴(各社記載) | 保険償還名称・価格(診療報酬) | 管理区分 (薬機法) |
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分類 | 一般的名称 | |||||||
外科・整形外科用 手術材料 |
粘着性透明創傷被覆・保護材 | ポリウレタンフィルム | オプサイト ウンド | スミス・アンド・ネフュー | 創傷部が治癒するための最適な環境を作り、疼痛を軽減する | 技術料に包括 | 管理医療機器 | |
テガダーム トランスペアレント ドレッシング | スリーエム ジャパン | 貼りやすさに配慮し、さまざまなサイズ、形状、入数がある | ||||||
キュティフィルム EX | 新タック化成/スミス・アンド・ネフュー | 創傷部が治癒するための最適な環境を作る | ||||||
非固着性創傷被覆・保護材 | 非固着成分コートガーゼ | アダプティックドレッシング | ケーシーアイ/スリーエム ジャパン 2社併売 | 平坦部位・手指足趾用など目的に合わせて材形の選択が可能 | 特定保険医療材料 | 在009・Ⅱ103・調013 【非固着性シリコンガーゼ】 広範囲熱傷用: 1080円/枚 平坦部位用: 142円/枚 凹凸部位用: 309円/枚 |
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トレックス | 富士システムズ | (記載なし) | ||||||
トレックス-C | (記載なし) | |||||||
メピテル | メンリッケヘルスケア | 両面にセーフタック採用。オープンメッシュ構造で滲出液を管理 | ||||||
エスアイ・メッシュ | アルケア | メッシュ構造による非固着性と密着性で最適な創傷管理を実現 | ||||||
アルテメッシュAD 非固着性ガーゼ | メドラインジャパン / ニトムズ | ぴったり貼れて優しくはがせる、柔軟な素材で創面を保護する | ||||||
局所管理親水性ゲル化創傷被覆・保護材 | 親水性メンブラン | ベスキチンW | ニプロ | キチンを和紙状に加工、創の保護、治癒の促進等を目的 | 在008・Ⅱ101・調012 【皮膚欠損用創傷被覆材】 真皮に至る創傷用 6円/cm2 |
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局所管理ハイドロゲル創傷被覆・保護材 | ハイドロコロイド | デュオアクティブET | コンバテック ジャパン | 薄く半透明で、貼付下で創部の観察が可能、浅い創の治癒を促進 | ||||
テガダーム ハイドロコロイド ライト | スリーエム ジャパン | 透明性があり創の観察が容易、楕円形型は経済性・作業性が良い | ||||||
アブソキュアーサジカル | 日東電工/ニトムズ | 高い柔軟性と適度な粘着性を併せ持ち、屈曲部にもよくなじむ | ||||||
レプリケア ET | スミス・アンド・ネフュー | 薄く、滑りが良いのでズレによる剥がれを軽減する | ||||||
ハイドロジェル | ビューゲル | ニチバン/大鵬薬品工業 | 水分80%で湿潤環境維持。透明で創面観察が容易。溶解しない | |||||
局所管理フォーム状創傷被覆・保護材 | ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト 薄型 | スミス・アンド・ネフュー | 密着性・追従性に優れた自着性フォームドレッシング | ||||
ソフトフォーム ドレッシング | 通気性、追従性が高い、シリコーン粘着の薄いドレッシング | |||||||
メピレックス ライト | メンリッケヘルスケア | セーフタック採用。脆弱皮膚にもやさしく密着し剥離時の痛み軽減 | ||||||
メピレックスボーダー ライト | セーフタック採用。高い吸収力。薄く高い追従性 | |||||||
メピレックス ボーダー フレックス ライト | セーフタック採用。高い吸収力。Y字カットで向上された柔軟性 | |||||||
ビスコース/ポリエステル | Sorbact アブソーブドレッシング | センチュリーメディカル | 吸収性パッドと白色バッキング付き、微生物を物理的に結合する | |||||
ビスコース/ポリプロピレン/ポリエステル不織布 | Sorbact サージカルドレッシング | 吸収性パッドと防水粘着フィルム付き、微生物を物理的に結合する | ||||||
抗菌性創傷被覆・保護材 | ハイドロコロイド | バイオヘッシブAgライト | アルケア | スルファジアジン銀による創傷面の衛生環境の向上を企図 | 在008・Ⅱ101・調012 【皮膚欠損用創傷被覆材】 皮下組織に至る創傷用 標準型: 10円/cm2 異形型: 35円/g |
高度管理医療機器 | ||
親水性ファイバー | アクアセルAg BURN | コンバテック ジャパン | アクアセルAgをナイロン糸で強化。熱傷処置に適したサイズ展開 | |||||
二次治癒ハイドロゲル創傷被覆・保護材 | ハイドロコロイド | コムフィール プラス | コロプラスト | 粘着面にアルギン酸Ca配合、高い柔軟性・伸縮性とデザイン向上 | ||||
デュオアクティブ | コンバテック ジャパン | 創を密閉して湿潤環境を保ち血管新生・肉芽増殖、上皮形成を促進 | ||||||
デュオアクティブ CGF | 交換時にゲルが残りにくい。柔軟性に優れさまざまな部位に貼付可能 | |||||||
アブソキュアーウンド | 日東電工/ニトムズ | 吸液性・保型性に優れ、滲出液の漏れが起こりにくい | ||||||
テガダーム ハイドロコロイド | スリーエム ジャパン | 透明性があり創の観察が容易、楕円形型は経済性・作業性が良い | ||||||
レプリケア ウルトラ | スミス・アンド・ネフュー | 薄く、滑りが良いのでズレによる剥がれを軽減する | ||||||
ハイドロジェル | イントラサイト ジェル システム | 壊死組織の自己融解、肉芽形成、及び上皮化を促進 | ||||||
グラニュゲル | コンバテック ジャパン | 壊死組織を融解し、肉芽形成・上皮化を促進 | ||||||
Sorbact ジェルドレッシング | センチュリーメディカル | ハイドロゲルを添加した微生物を物理的に結合するドレッシング | ||||||
ATKパッド | オカモト | (記載なし) | ||||||
二次治癒親水性ゲル化創傷被覆・保護材 | 親水性メンブラン | ベスキチンW-A | ニプロ | キチンをフリース状に加工、創の保護、治癒の促進等が目的 | ||||
親水性ファイバー | アルゴダーム トリオニック | スミス・アンド・ネフュー | 型崩れしにくく除去しやすい。滲出液の吸収を期待する創に適用 | |||||
カルトスタット | コンバテック ジャパン | 止血促進と共に優れた滲出液吸収で治癒に適した湿潤環境を提供 | ||||||
アクアセル | 滲出液を吸収・細菌を封じ込め、創の湿潤環境保持、逆戻りを防ぐ | |||||||
アクアセル フォーム | アクアセル・フォーム層で高滲出液吸収を実現。粘着層はシリコン | |||||||
高吸収性ポリマー | Sorbact スーパーアブソーブ | センチュリーメディカル | 高吸収性ポリマー付き微生物を物理的に結合するドレッシング | |||||
二次治癒フォーム状創傷被覆・保護材 | ポリウレタンフォーム | テガダーム フォーム ドレッシング | スリーエム ジャパン | しなやかで柔らかいフォームは、屈曲部にもなじみやすい | ||||
テガダーム シリコーンフォーム ドレッシング(ボーダータイプ) | シリコーン粘着剤の肌への優しさに加え、剥がれにくさを両立 | |||||||
バイアテン | コロプラスト | 高い柔軟性。周囲辺縁に向かって薄く成形 | ||||||
バイアテン シリコーン+ | 滲出液を垂直方向へ吸収。全貼付面にシリコーンゲルを使用 | |||||||
ハイドロサイト プラス | スミス・アンド・ネフュー | 自由にカットして使用できる非粘着タイプのハイドロサイト | ||||||
ハイドロサイト AD プラス | 創部への被覆が容易でしっかり粘着タイプのハイドロサイト | |||||||
ハイドロサイト AD ジェントル | 肌に優しいシリコーン粘着タイプのハイドロサイト | |||||||
ハイドロサイト ライフ | ハイドロシリーズで最もパッド吸収力が高いハイドロサイト | |||||||
メピレックス | メンリッケヘルスケア | セーフタック採用。やわらかく高い追従性。脆弱皮膚にもやさしい | ||||||
メピレックス ボーダーII | セーフタック採用。5層構造。高い吸収性。疼痛や組織損傷を軽減 | |||||||
メピレックス ボーダー フレックス | セーフタック採用。Y字カットで柔軟性を向上させた快適な使用感 | |||||||
Sorbact フォーム ドレッシング | センチュリーメディカル | ポリウレタンフォーム付き微生物を物理的に結合するドレッシング | ||||||
抗菌性創傷被覆・保護材 | 親水性ファイバー | アクアセルAg | コンバテック ジャパン | アクアセルに抗菌効果をプラス。柔軟性があり、深い創にも密着 | ||||
アクアセルAg 強化型 | アクアセルAgをリヨセル糸で強化。使いやすいリボン状 | |||||||
アクアセルAg Extra | アクアセルAgにさらなる吸収力と強度をプラス。交換頻度を低減 | |||||||
アクアセルAgフォーム | アクアセルフォームに銀イオンの抗菌効果をプラス | |||||||
アクアセルAg アドバンテージ | BTCとEDTAの添加で銀イオンの抗菌性能のスピードを向上 | |||||||
アクアセルAg アドバンテージリボン | BTCとEDTA添加の抗菌性創傷被覆材。充填しやすいリボン状 | |||||||
ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト ジェントル 銀 | スミス・アンド・ネフュー | シリコーン粘着のハイドロサイトに銀の抗菌効果を追加 | |||||
メピレックス Ag | メンリッケヘルスケア | セーフタックと硫酸銀による即効・持続的抗菌効果(テープ無) | ||||||
メピレックスボーダーAg | セーフタックと硫酸銀による即効・持続的抗菌効果(テープ有) | |||||||
ハイドロコロイド | バイオヘッシブAg | アルケア | スルファジアジン銀による創傷面の衛生環境の向上を企図 | |||||
ハイドロジェル | プロントザン | ビー・ブラウンエースクラップ | 抗菌性創傷洗浄液および抗菌性創傷用ゲルからなる製品 | |||||
深部体腔創傷被覆・保護材 | セルロースアセテート | Sorbact コンプレス | センチュリーメディカル | 微生物を物理的に結合するドレッシング | ||||
コットン | Sorbact リボンガーゼ | センチュリーメディカル | コットン素材、微生物を物理的に結合するドレッシング | |||||
親水性フォーム | ベスキチンF | ニプロ | キチンをスポンジ状に加工、創の保護、治癒の促進等が目的 | 在008・Ⅱ101・調012 【皮膚欠損用創傷被覆材】 筋・骨に至る創傷用 25円/cm2 |
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親水性ビーズ | 高分子ポリマー | デブリサンペースト | 佐藤製薬 | (記載なし) | Ⅱ105 【デキストラノマー】 145円/g |
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陰圧創傷治療システム | ポリウレタンフォーム/ポリビニルアルコールフォーム | V.A.C.治療システム | ケーシーアイ | 構成品として使用。滲出液を効率的に除去、肉芽形成を促進 | Ⅱ159 【局所陰圧閉鎖処置用材料】 18円/cm2 |
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InfoV.A.C.治療システム | ||||||||
ActiV.A.C.治療システム | ||||||||
V.A.C.Ulta治療システム | ||||||||
コットン | RENASYS創傷治療システム | スミス・アンド・ネフュー | 電動式吸引ポンプと組み合わせて使用。肉芽形成促進、疼痛軽減 | |||||
ポリウレタンフォーム | RENASYS創傷治療システム | 電動式吸引ポンプと組み合わせて使用。肉芽形成を促進 | ||||||
単回使用陰圧創傷治療システム | ポリウレタンフォーム | SNaP陰圧閉鎖療法システム | ケーシーアイ | 構成品として使用。滲出液を効率的に除去、肉芽形成を促進 | 在013・Ⅱ159 【局所陰圧閉鎖処置用材料】 18円/cm2 |
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多層構造ドレッシング | PICO創傷治療システム | スミス・アンド・ネフュー | 小型ポンプと組み合わせて使用。滲出液を吸収・蒸散させ管理 | |||||
UNO 単回使用創傷治療システム | センチュリーメディカル | キャニスター(70cc)と合わせて滲出液を処理する | ||||||
陰圧維持管理装置 | SNaP陰圧閉鎖療法システム | ケーシーアイ | 非電動・高静音、入院・外来・在宅で使用可能な陰圧創傷管理機器 | 在014・Ⅱ180 【陰圧創傷治療用カートリッジ】 19,800円(入院外のみ算定可) |
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PICO創傷治療システム | スミス・アンド・ネフュー | 電動式、入院・入院外で使用可能。キャニスターレスの小型ポンプ | ||||||
UNO 単回使用創傷治療システム | センチュリーメディカル | 1台で「連続/ Variable モード」の切り替えが可能。最大15日間使用可能 | ||||||
生体内移植器具 | ヒト羊膜使用組織治癒促進用材料 | ヒト羊膜 | エピフィックス(EpiFix) | EPJメディカルサービス/グンゼメディカル | ヒト由来の羊膜・絨毛膜を使用した組織治癒促進用材料 | Ⅱ218 ヒト羊膜使用創傷被覆材 35,100円/cm2 |
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コラーゲン使用人工皮膚 | コラーゲンスポンジ | ペルナック | グンゼメディカル | 全層皮膚欠損創における肉芽形成を目的とした人工真皮 | Ⅱ102 【真皮欠損用グラフト】 452円/cm2 |
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ペルナック Gプラス | ペルナックにアルカリ処理ゼラチンを含有させた人工真皮 | |||||||
テルダーミス真皮欠損用グラフト | オリンパス テルモ バイオマテリアル/アルケア | 熱傷・外傷・手術創などの重度の皮膚・粘膜欠損修復用材料 | ||||||
インテグラ真皮欠損用グラフト | センチュリーメディカル | 重度皮膚欠損創に使用可能、コンドロイチン6硫酸を架橋結合 | ||||||
脱細胞組織 | OASIS細胞外マトリックス | クックメディカルジャパン | 天然組成の3次元構造&構成成分が難治性を含む創傷の治癒を促進 |
表2 役割に応じたドレッシング材の種類
機能 | 使用材料分類 | 主な商品名 |
---|---|---|
創面保護 | ポリウレタンフィルム | オプサイト®ウンド、バイオクルーシブ®、キュティフィルム®EX、3M™テガダーム™トランスペアレントドレッシング、パーミエイド®S |
創面閉鎖と湿潤環境 | ハイドロコロイド | デュオアクティブ®ET、3M™テガダーム™ハイドロコロイドライト、アブソキュア®-サジカル、レプリケア®ET |
乾燥した創の湿潤 | ハイドロジェル | ビューゲル®、グラニュゲル®、イントラサイト ジェル システム |
滲出液吸収性 | ポリウレタンフォーム | 3M™テガダーム™フォームドレッシング、バイアテン® シリコーン+、ハイドロサイト®AD ジェントル、メピレックス® ボーダー フレックス |
親水性メンブラン | ベスキチン® | |
親水性ファイバー | ソーブサン、アルゴダーム トリオニック、カルトスタット®、アルジサイトAg、アクアセル®Ag | |
感染抑制作用 | 親水性ファイバー | アクアセル®Ag、アルジサイトAg |
ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト® ジェントル銀、メピレックス®Ag | |
ハイドロコロイド | バイオヘッシブ®Ag | |
疼痛緩和 | ハイドロコロイド | コムフィール、デュオアクティブ®CGF、アブソキュア®-ウンド |
ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト®AD ジェントル、メピレックス® ボーダー フレックス | |
親水性ファイバー | アクアセル®、アクアセル®Ag | |
親水性メンブラン | ベスキチン®W-A | |
ハイドロジェル | グラニュゲル® |
日本褥瘡学会編:在宅褥瘡テキストブック.照林社,東京,2020:120.より引用
1.創面保護に適したもの
ポリウレタンフィルム
[代表的な商品名]オプサイト®ウンド、バイオクルーシブ®、キュティフィルム®EX、3M™テガダーム™トランスペアレントドレッシング、パーミエイド®S
透明または半透明のポリウレタンフィルムに耐久性のある粘着剤を塗布したドレッシング材です。創部からの滲出液によって湿潤環境を保持し、治癒環境を整えます。DTIが考えられる褥瘡で、創面保護の目的で使用できます。
2.創面を閉鎖し、湿潤環境を形成するもの
ハイドロコロイド
[代表的な商品名]デュオアクティブ®ET、3M™テガダーム™ハイドロコロイドドレッシング、アブソキュア®-サジカル、レプリケア®ET
ハイドロコロイドは湿潤環境保持の効果が最も期待できるドレッシング材です。一般に、「粘着層」と「防水加工された外層」の2重構造になっています(図1)。粘着層は疎水性ポリマーと親水性ポリマーがブレンドされた物体です。疎水性ポリマーは粘着性を、親水性ポリマーは吸水性を有しています。そのため、閉鎖され湿潤した環境をつくることができます。創周囲の皮膚はハイドロコロイド材の貼付により汚染を予防でき、皮膚を健常に保ちます。滲出液は親水性ポリマーによって吸収され、吸水した部分はゲル化します。過剰な滲出液を吸収する機能はないため、滲出液の多い創には適していません。
図1 ハイドロコロイドの構造
日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2 版.照林社,東京,2015:37.より引用
3.乾燥した創を湿潤させるもの
ハイドロジェル
[代表的な商品名]ビューゲル®、イントラサイト ジェル システム
乾燥した壊死組織に覆われた創などに対して水分によって軟化させて自己融解を促す機能をもっています。親水部分をもつ不溶性のポリマーで、大部分は水で構成された透明あるいは半透明のジェル状のドレッシング材です(図2)。
シート状のものは湿潤環境を維持するとともに速やかな冷却作用が認められるため疼痛や炎症の緩和も期待されます。チューブ入りのものは、デブリードマン効果、上皮形成の促進、また疼痛緩和作用も期待できます。
図2 ハイドロジェルの構造
日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:37.より引用
4.滲出液を吸収し保持するもの
ポリウレタンフォーム
[代表的な商品名]テガダーム™ フォーム ドレッシング、バイアテンシリコーン+、ハイドロサイト®ADジェントル、メピレックス®ボーダー フレックス
親水性ポリマーを含有し滲出液をスピーディに吸収し創周囲の浸軟を防ぎます。創の湿潤環境を保ちドレッシング材の溶解や残渣物を創面に残しません。吸い上げた滲出液は後戻りしないような工夫がされています。ポリウレタンフォームの構造を図3に示しました。ハイドロポリマーは、中間層の不織布吸収シート、パッド部のハイドロポリマー吸収パッドによって滲出液を吸収します(図4)。
図3 ポリウレタンフォームの構造
日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2 版.照林社,東京,2015:40.より引用
(資料提供:スミス・アンド・ネフュー株式会社)
図4 ハイドロポリマーの構造
日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック- 第2版.照林社,東京,2015:41.より引用
5.感染コントロールが期待できるもの
銀含有ハイドロファイバー®
[代表的な商品名]アクアセル®Ag、アクアセル®Agフォーム
創を湿潤環境に保持しながら、創底部には低濃度の銀イオンが放出されるものです。銀イオンには抗菌作用があります。細菌を含む滲出液を内部に留めて、創部への逆戻りを抑えます。
6.疼痛を緩和できるもの
ポリウレタンフォーム/ソフトシリコン
[代表的な商品名]ハイドロサイト®ADジェントル、メピレックス®ボーダーフレックス
ドレッシング材によって疼痛を除去することはできません。ただ、創面を適切な湿潤環境に保持することによって、疼痛緩和の効果が期待できます(図5)。
図5 ポリウレタンフォーム/ソフトシリコンの構造
日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:42.より引用
(資料提供:メンリッケヘルスケア株式会社)
7.創の清浄化を目的としたもの
[代表的な商品名]アクアセル®Agアドバンテージ、プロントザン
創傷管理の新しい概念「創傷衛生(Wound hygiene)」で指摘された創面に付着したバイオフィルムを効果的に除去するために推奨された界面活性剤を含んだ創傷洗浄剤、ならびに抗菌性を備えたドレッシング材が開発されています。
8.「ラップ療法」について
一時さまざまなところで騒がれたいわゆる“ラップ療法”に対しては、日本褥瘡学会が一定の見解を出しています。同学会が定めるいわゆる“ラップ療法”の定義は「非医療機器の非粘着性プラスチックシート(たとえば、食品包装用ラップなど)を用い、体表の創傷を被覆する処置を総称する」というものです。『褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)』では、その使用について以下のように説明しています。
「褥瘡治療にあたっては医療用として認可された創傷被覆材の使用が望ましい。非医療用材料を用いた、いわゆる“ラップ療法”は医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし、褥瘡の治療について十分な知識と経験をもった医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである」
9.ドレッシング材の交換について
ドレッシング材は、滲出液がどの程度付着しているかをよく観察して交換のめやすとします。通常は、滲出液がドレッシング材の端1~1.5cmまで到達しているのを観察したら交換します。適切な交換時期は、ドレッシング材の種類によって異なります。
ドレッシング材交換時の観察点を表3に示します。
また、初めてドレッシング材を使用する場合は、連続して7日間貼付が可能なものであっても、2~3日以内に創を見て判断します。判断の基準は、滲出液の状態や感染徴候などです。
表3 ドレッシング材交換時の観察点
- 創の滲出液の量
- 創の肉芽の色調、壊死組織の有無
- 創の乾燥の有無
- 創周囲皮膚が浸軟していないか
- 滲出液の色やにおい
- ドレッシング材がめくれたり剥がれたりしていないか