Part6 褥瘡(じょくそう)治療・ケアのカギを握る
ドレッシング材・外用薬の使い方
2021年6月更新(2016年6月公開)
褥瘡アセスメントに必須!改定された「DESIGN-R®2020」
ここだけは知っておきたいポイント
ドレッシング材は「創における湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材をいい、従来のガーゼは除く」と定義されています(日本褥瘡学会)。ドレッシング材には、創の湿潤環境を保持し治癒環境を整える機能があります。褥瘡の治癒過程に沿って、創の収縮や滲出液の減少に応じて適宜ドレッシング材を選択していくことが必要です。現在、わが国で薬事上認可されている皮膚欠損用創傷被覆材の医療機器分類を表1に示します。
ドレッシング材には、次のような役割が期待されます。①創を保護する、②創面を閉鎖し、湿潤環境を形成する、③乾燥した創を湿潤させる、④滲出液を吸収し保持する、⑤感染をコントロールする、⑥疼痛を緩和する。それぞれの役割に応じたドレッシング材の種類と主な商品名を表2に挙げました。
表1 創傷被覆・保護材等一覧
*本表は販売名で示したため商標登録マークは付けていない
医療機器 分類 (薬機法) |
使用材料 (業界自主分類) |
販売名 | 会社名 (製造販売元/販売元) |
特徴(各社記載) | 保険償還名称・価格(診療報酬) | 管理区分 (薬機法) |
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分類 | 一般的名称 | |||||||
外科・整形外科用 手術材料 |
粘着性透明創傷被覆・保護材 | ポリウレタンフィルム | オプサイト ウンド | スミス・アンド・ネフュー | 創傷部が治癒するための最適な環境を作り、疼痛を軽減する | 技術料に包括 | 管理医療機器 | |
テガダーム トランスペアレント ドレッシング | スリーエム ジャパン | 貼りやすさに配慮し、さまざまなサイズ、形状、入数がある | ||||||
バイオクルーシブPlus | ケーシーアイ | 水蒸気透過性を向上、片手でも貼付しやすいフィルムドレッシング | ||||||
キュティフィルム EX | 新タック化成/スミス・アンド・ネフュー | 創傷部が治癒するための最適な環境を作る | ||||||
非固着性創傷被覆・保護材 | 非固着成分コートガーゼ | アダプティックドレッシング | ケーシーアイ | 平坦部位・手指足趾用など目的に合わせて材形の選択が可能 | 特 定 保 険 医 療 材 料 | 在009・Ⅱ103・調013 【非固着性シリコンガーゼ】 広範囲熱傷用: 1080円/枚 平坦部位用: 142円/枚 凹凸部位用: 309円/枚 |
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トレックス | 富士システムズ | (記載なし) | ||||||
トレックス-C | (記載なし) | |||||||
メピテル | メンリッケヘルスケア | 両面にセーフタック採用。オープンメッシュ構造で滲出液を管理 | ||||||
エスアイ・メッシュ | アルケア | メッシュ構造による非固着性と密着性で最適な創傷管理を実現 | ||||||
局所管理親水性ゲル化創傷被覆・保護材 | 親水性メンブラン | ベスキチンW | ニプロ | キチンを和紙状に加工、創の保護、治癒の促進等を目的 | 在008・Ⅱ101・調012 【皮膚欠損用創傷被覆材】 真皮に至る創傷用 6円/cm2 |
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局所管理ハイドロゲル創傷被覆・保護材 | ハイドロコロイド | デュオアクティブET | コンバテック ジャパン | 薄く半透明で、貼付下で創部の観察が可能、浅い創の治癒を促進 | ||||
テガダーム ハイドロコロイド ライト | スリーエム ジャパン | 透明性があり創の観察が容易、楕円形型は経済性・作業性が良い | ||||||
アブソキュアーサジカル | 日東電工/ニトムズ | 高い柔軟性と適度な粘着性を併せ持ち、屈曲部にもよくなじむ | ||||||
レプリケア ET | スミス・アンド・ネフュー | 薄く、滑りが良いのでズレによる剥がれを軽減する | ||||||
ハイドロジェル | ビューゲル | ニチバン/大鵬薬品工業 | 水分80%で湿潤環境維持。透明で創面観察が容易。溶解しない | |||||
局所管理フォーム状創傷被覆・保護材 | ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト 薄型 | スミス・アンド・ネフュー | 密着性・追従性に優れた自着性フォームドレッシング | ||||
メピレックス ライト | メンリッケヘルスケア | セーフタック採用。脆弱皮膚にもやさしく密着し剥離時の痛み軽減 | ||||||
メピレックスボーダー ライト | セーフタック採用。高い吸収力。薄く高い追従性 | |||||||
抗菌性創傷被覆・保護材 | ハイドロコロイド | バイオヘッシブAgライト | アルケア | スルファジアジン銀による創傷面の衛生環境の向上を企図 | 高度管理医療機器 | |||
親水性ファイバー | アクアセルAg BURN | コンバテック ジャパン | アクアセルAgをナイロン糸で強化。熱傷処置に適したサイズ展開 | |||||
二次治癒ハイドロゲル創傷被覆・保護材 | ハイドロコロイド | コムフィール | コロプラスト | 高い柔軟性・伸縮性と密着性 。周囲辺縁に向かって薄く成形 | 在008・Ⅱ101・調012 【皮膚欠損用創傷被覆材】 皮下組織に至る創傷用 標準型: 10円/cm2 異形型: 35円/g |
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コムフィール プラス | 粘着面にアルギン酸Ca配合、高い柔軟性・伸縮性とデザイン向上 | |||||||
デュオアクティブ | コンバテック ジャパン | 創を密閉して湿潤環境を保ち血管新生・肉芽増殖、上皮形成を促進 | ||||||
デュオアクティブ CGF | 交換時にゲルが残りにくい。柔軟性に優れさまざまな部位に貼付可能 | |||||||
アブソキュアーウンド | 日東電工/ニトムズ | 吸液性・保型性に優れ、滲出液の漏れが起こりにくい | ||||||
テガダーム ハイドロコロイド | スリーエム ジャパン | 透明性があり創の観察が容易、楕円形型は経済性・作業性が良い | ||||||
レプリケア ウルトラ | スミス・アンド・ネフュー | 薄く、滑りが良いのでズレによる剥がれを軽減する | ||||||
ハイドロジェル | イントラサイト ジェル システム | 壊死組織の自己融解、肉芽形成、及び上皮化を促進 | ||||||
グラニュゲル | コンバテック ジャパン | 壊死組織を融解し、肉芽形成・上皮化を促進 | ||||||
Sorbact ジェルドレッシング | センチュリーメディカル | ハイドロゲルを添加した微生物を物理的に結合するドレッシング | ||||||
二次治癒親水性ゲル化創傷被覆・保護材 | 親水性メンブラン | ベスキチンW-A | ニプロ | キチンをフリース状に加工、創の保護、治癒の促進等が目的 | ||||
親水性ファイバー | アルゴダーム トリオニック | スミス・アンド・ネフュー | 型崩れしにくく除去しやすい。滲出液の吸収を期待する創に適用 | |||||
カルトスタット | コンバテック ジャパン | 止血促進と共に優れた滲出液吸収で治癒に適した湿潤環境を提供 | ||||||
アクアセル | 滲出液を吸収・細菌を封じ込め、創の湿潤環境保持、逆戻りを防ぐ | |||||||
アクアセル フォーム | アクアセル・フォーム層で高滲出液吸収を実現。粘着層はシリコン | |||||||
二次治癒フォーム状創傷被覆・保護材 | ポリウレタンフォーム | ティエール | ケーシーアイ | 創の形状に合わせてフィット、滲出液が漏れにくいフォーム材 | ||||
テガダーム フォーム ドレッシング | スリーエム ジャパン | しなやかで柔らかいフォームは、屈曲部にもなじみやすい | ||||||
バイアテン | コロプラスト | 高い柔軟性。周囲辺縁に向かって薄く成形 | ||||||
バイアテン シリコーン+ | 滲出液を垂直方向へ吸収。全貼付面にシリコーンゲルを使用 | |||||||
ハイドロサイト プラス | スミス・アンド・ネフュー | 自由にカットして使用できる非粘着タイプのハイドロサイト | ||||||
ハイドロサイト AD プラス | 創部への被覆が容易でしっかり粘着タイプのハイドロサイト | |||||||
ハイドロサイト AD ジェントル | 肌に優しいシリコーン粘着タイプのハイドロサイト | |||||||
ハイドロサイト ライフ | ハイドロシリーズで最もパッド吸収力が高いハイドロサイト | |||||||
メピレックス | メンリッケヘルスケア | セーフタック採用。やわらかく高い追従性。脆弱皮膚にもやさしい | ||||||
メピレックス ボーダーII | セーフタック採用。5層構造。高い吸収性。疼痛や組織損傷を軽減 | |||||||
メピレックス ボーダー フレックス | セーフタック採用。Y字カットで柔軟性を向上させた快適な使用感 | |||||||
抗菌性創傷被覆・保護材 | 親水性ファイバー | アクアセルAg | コンバテック ジャパン | アクアセルに抗菌効果をプラス。柔軟性があり、深い創にも密着 | ||||
アクアセルAg 強化型 | アクアセルAgをリヨセル糸で強化。使いやすいリボン状 | |||||||
アクアセルAg Extra | アクアセルAgにさらなる吸収力と強度をプラス。交換頻度を低減 | |||||||
アクアセルAgフォーム | アクアセルフォームに銀イオンの抗菌効果をプラス | |||||||
アルジサイト Ag | スミス・アンド・ネフュー | アルギン酸ドレッシングに、銀による抗菌効果を追加 | ||||||
ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト 銀 | スミス・アンド・ネフュー | 高い吸収力に銀の抗菌効果を加えたハイドロサイト | |||||
ハイドロサイト ジェントル 銀 | シリコーン粘着のハイドロサイトに銀の抗菌効果を追加 | |||||||
メピレックス Ag | メンリッケヘルスケア | セーフタックと硫酸銀による即効・持続的抗菌効果(テープ無) | ||||||
メピレックスボーダーAg | セーフタックと硫酸銀による即効・持続的抗菌効果(テープ有) | |||||||
ハイドロコロイド | バイオヘッシブAg | アルケア | スルファジアジン銀による創傷面の衛生環境の向上を企図 | |||||
ハイドロジェル | プロントザン | ビー・ブラウンエースクラップ | 抗菌性創傷洗浄液および抗菌性創傷用ゲルからなる製品 | |||||
深部体腔創傷被覆・保護材 | セルロースアセテート | Sorbact コンプレス | センチュリーメディカル | 微生物を物理的に結合するドレッシング | ||||
親水性フォーム | ベスキチンF | ニプロ | キチンをスポンジ状に加工、創の保護、治癒の促進等が目的 | 在008・Ⅱ101・調012 【皮膚欠損用創傷被覆材】 筋・骨に至る創傷用 25円/cm2 |
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親水性ビーズ | 高分子ポリマー | デブリサンペースト | 佐藤製薬 | (記載なし) | Ⅱ105 【デキストラノマー】 145円/g |
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陰圧創傷治療システム | ポリウレタンフォーム/ポリビニルアルコールフォーム | V.A.C.治療システム | ケーシーアイ | 構成品として使用。滲出液を効率的に除去、肉芽形成を促進 | Ⅱ159 【局所陰圧閉鎖処置用材料】 20円/cm2 |
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InfoV.A.C.治療システム | ||||||||
ActiV.A.C.治療システム | ||||||||
V.A.C.Ulta治療システム | ||||||||
コットン | RENASYS創傷治療システム | スミス・アンド・ネフュー | 電動式吸引ポンプと組み合わせて使用。肉芽形成促進、疼痛軽減 | |||||
ポリウレタンフォーム | RENASYS創傷治療システム | 電動式吸引ポンプと組み合わせて使用。肉芽形成を促進 | 在013・Ⅱ159 【局所陰圧閉鎖処置用材料】 20円/cm2 |
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単回使用陰圧創傷治療システム | ポリウレタンフォーム | SNaP陰圧閉鎖療法システム | ケーシーアイ | 構成品として使用。滲出液を効率的に除去、肉芽形成を促進 | ||||
多層構造ドレッシング | PICO創傷治療システム | スミス・アンド・ネフュー | 小型ポンプと組み合わせて使用。滲出液を吸収・蒸散させ管理 | |||||
陰圧維持管理装置 | SNaP陰圧閉鎖療法システム | ケーシーアイ | 非電動・高静音、入院・外来・在宅で使用可能な陰圧創傷管理機器 | 在014・Ⅱ180 【陰圧創傷治療用カートリッジ】 19,800円(入院外のみ算定可) |
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PICO創傷治療システム | スミス・アンド・ネフュー | 電動式、入院・入院外で使用可能。キャニスターレスの小型ポンプ | ||||||
生体内移植器具 | コラーゲン使用人工皮膚 | コラーゲンスポンジ | ペルナック | グンゼ/コンバテック ジャパン | 全層皮膚欠損創における肉芽形成を目的とした人工真皮 | Ⅱ102 【真皮欠損用グラフト】 452円/cm2 |
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ペルナック Gプラス | ペルナックにアルカリ処理ゼラチンを含有させた人工真皮 | |||||||
テルダーミス真皮欠損用グラフト | オリンパス テルモ バイオマテリアル/アルケア | 熱傷・外傷・手術創などの重度の皮膚・粘膜欠損修復用材料 | ||||||
インテグラ真皮欠損用グラフト | センチュリーメディカル | 重度皮膚欠損創に使用可能、コンドロイチン6硫酸を架橋結合 | ||||||
脱細胞組織 | OASIS細胞外マトリックス | クックメディカルジャパン | 天然組成の3次元構造&構成成分が難治性を含む創傷の治癒を促進 |
表2 役割に応じたドレッシング材の種類
機能 | 種類 | 主な商品名 |
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創面保護 | ポリウレタンフィルム | オプサイト®ウンド、3MTM テガダームTM トランスペアレント ドレッシング、パーミエイド®S |
創面閉鎖と湿潤環境 | ハイドロコロイド | デュオアクティブ®、コムフィール®、アブソキュア®-ウンド |
乾燥した創の湿潤 | ハイドロジェル | ビューゲル®、グラニュゲル®、イントラサイト ジェル システム |
滲出液吸収性 | ポリウレタンフォーム | ハイドロサイト® プラス |
アルギン酸/CMC | アスキナ ソーブ | |
ポリウレタンフォーム/ソフトシリコン | メピレックス® ボーダー | |
アルギン酸塩 | カルトスタット®、ソーブサン | |
アルギン酸フォーム | クラビオ®FG | |
キチン | ベスキチン®W-A | |
ハイドロファイバー® | アクアセル®、アクアセル®Ag | |
ハイドロファイバー®/ハイドロコロイド | バーシバ®XC® | |
ハイドロポリマー | ティエール® | |
感染抑制作用 | 銀含有ドレッシング材 | アクアセル®Ag アルジサイト銀 ハイドロサイト®銀 バイオヘッシブ® Ag メピレックス®Ag |
疼痛緩和 | ハイドロコロイド | デュオアクティブ® |
ポリウレタンフォーム/ソフトシリコン | ハイドロサイト®AD ジェントル、メピレックス® ボーダー | |
ハイドロファイバー® | アクアセル®、アクアセル®Ag | |
ハイドロファイバー®/ハイドロコロイド | バーシバ®XC® | |
キチン | ベスキチン®W-A | |
ハイドロジェル | グラニュゲル® |
1.創保護に適したもの
①ポリウレタンフィルム
[商品名] オプサイト®ウンド、3MTMテガダームTM トランスペアレント ドレッシング、パーミエイド®S
透明または半透明のポリウレタンフィルムに耐久性のある粘着剤を塗布したドレッシング材です。創部からの滲出液によって湿潤環境を保持し、治癒環境を整えます。DTIが考えられる褥瘡で、創面保護の目的で使用できます。
2.創面を閉鎖し、湿潤環境を形成するもの
①ハイドロコロイド
[商品名] デュオアクティブ®、コムフィール®、アブソキュア®-ウンド
ハイドロコロイドは湿潤環境保持の効果が最も期待できるドレッシング材です。一般に、「粘着層」と「防水加工された外層」の2重構造になっています(図1)。粘着層は疎水性ポリマーと親水性ポリマーがブレンドされた物体です。疎水性ポリマーは粘着性を、親水性ポリマーは吸水性を有しています。そのため、閉鎖され湿潤した環境をつくることができます。滲出液は親水性ポリマーによって吸収されますが、過剰な滲出液を吸収する機能はありませんので、滲出液の多い創には適していません。
図1 ハイドロコロイドの構造
日本褥瘡学会:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:37.より引用
3.乾燥した創を湿潤させるもの
①ハイドロジェル
[商品名] ビューゲル®、グラニュゲル®、イントラサイト ジェル システム
乾燥した壊死組織に覆われた創などに対して水分によって軟化させて自己融解を促す機能をもっています。親水部分をもつ不溶性のポリマーで、大部分は水で構成された透明あるいは半透明のジェル状のドレッシング材です(図2)。シート状のものは湿潤環境を維持するとともに速やかな冷却作用が認められるため疼痛や炎症の緩和も期待されます。チューブ入りのものは、デブリードマン効果、上皮形成の促進、また疼痛緩和作用も期待できます。
図2 ハイドロジェルの構造
日本褥瘡学会:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:37.より引用
4.滲出液を吸収し保持するもの
①ポリウレタンフォーム
[商品名] ハイドロサイト®プラス、ハイドロサイト®ADプラス
②ハイドロポリマー
[商品名] ティエール®
創内の余分な滲出液を貯留させないように、創面の滲出液を吸収する効果があります。ポリウレタンフォームの構造を図3に示しました。ハイドロポリマーは、中間層の不織布吸収シート、パッド部のハイドロポリマー吸収パッドによって滲出液を吸収します(図4)。
図3 ポリウレタンフォームの構造
日本褥瘡学会:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:40.より引用
(資料提供:スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント)
図4 ハイドロポリマーの構造
日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:41.より引用
5.感染コントロールが期待できるもの
①銀含有ハイドロファイバー®
[商品名] アクアセル®Ag、アクアセル®Agフォーム
創を湿潤環境に保持しながら、創底部には低濃度の銀イオンが放出されるものです。銀イオンには抗菌作用があります。細菌を含む滲出液を内部に留めて、創部への逆戻りをおさえます。
6.疼痛を緩和できるもの
②ポリウレタンフォーム/ソフトシリコン
[商品名] ハイドロサイト®ADジェントル、メピレックス®ボーダー
ドレッシング材によって疼痛を除去することはできません。ただ、創面を適切な湿潤環境に保持することによって、疼痛緩和の効果が期待できます(図5)。
図5 ポリウレタンフォーム/ソフトシリコン
日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブック-第2版.照林社,東京,2015:42.より引用(資料提供:メンリッケ ヘルスケア)
7.ドレッシング材選択のポイント
ドレッシング材選択においては、いくつかの原則があります。
一つは、ドレッシング材は原則的に「感染創には使用しない」ことです。感染創や感染リスクの高い時期には閉鎖性のドレッシング材は使用せず、感染コントロールを優先することが重要です。感染コントロールは表3のように行います。
表3 感染コントロールの原則
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もう一つは、「ドレッシング材の交換を適切に行う」ことです。ドレッシング材は、滲出液の量に応じて数日に一度、最長で1週間以内に交換します。ドレッシング材の交換を適切に行うことで、良好な湿潤環境が保持できます。交換の時期を逸しないためにも創の的確なアセスメントは常時必要です。
こうした原則に基づいてドレッシング材を選択し、適切に使用していくことが大切です。
常に創を評価し、ガイドラインに沿って、DESIGN-R®の「大文字」を「小文字」にしていくような適切な使い方をマスターする必要があります。これについては、「DESIGN-R®に沿った外用薬とドレッシング材の使い方を理解しよう」の項で詳述します。