Part4 褥瘡(じょくそう)状態評価の最新ツール DESIGN-R®(デザインアール)2020を理解するDESIGNからDESIGN-R®(デザインアール)へ
この章は、一般社団法人日本褥瘡学会編集『改定DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント』
の内容をもとに具体的に解説しています。
2023年2月更新(2016年6月公開)
DESIGNは、開発当初から5年後には改定する予定がありました。DESIGNでは、各項目の点数の重み付けは、深さ(D/d)の項目は1~5、滲出液(E/e)は1~3というように、エキスパートの経験と勘によって行われていました。例えば、「中等度の滲出液(e2)」と「硬く厚い密着した壊死組織(N2)」では同じ2点でも軽度と重度の違いがあり、同じ得点であっても患者さんの重症度が異なり、治癒経過に差が生じます。つまり褥瘡の「重い/軽い」が判定できなかったのです。同一患者の褥瘡は点数の変化で評価できるのですが、他の患者さんとの比較ができません。そこで、2008年に褥瘡の「経過」を見るのと同時に「重症度」も見られるように重み付けが行われました。学会の評議員の協力を得て約6000人のデータを収集し、統計学的に分析して重み付けを行い、DESIGN-R®と改称されました。「R」は「rating」の略です。
DESIGN-R®には3つの脚注が付いていますが、最も重要なのは、「深さ(D/d)の得点は合計点に加えない」という点です。「D/d」の項目は点数への影響が統計学的に他の項目と重複することが確認されたためです。そして、それまで現場の医療従事者が共通言語として身につけたDESIGNの使い方を変えるのは混乱を招くと考えられたため項目は修正しないで、点数の変更、重み付けだけを変更しました。重症度は治癒日数をもとに分析したため、DESIGN-R®を使うことで患者間の重症度の比較ができるようになったうえに、おおまかな治癒日数が予測できるようになりました。こうして、DESIGN-R®では、DESIGNではできなかった異なる褥瘡の重症度の比較ができるようになりました(図1)。
図1 DESIGNとDESIGN-R®による異なる褥瘡での点数の変化
真田弘美:日本初の「DESIGN-R®」は世界標準の褥瘡状態評価ツールになった そして今,DESIGN-R®2020に.エキスパートナース 2021;37(3):19.より引用