最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part5 褥瘡(じょくそう)を防ぐために重要な体圧管理体圧と褥瘡との関係とは

2023年2月更新(2016年6月公開)

動画でわかるポジショニングと体位変換の基本と進め方

臨床に生かすポジショニングの基本となる考え方とテクニック

 私たち“ヒト”の身体には、二足歩行を獲得するために、“S字カーブ”と言われる生理的弯曲が備わっています。人の背骨を横から見ると、頸椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯となっています。この生理的弯曲があることが、歩行の際の衝撃吸収に役立っています。弯曲部分が、臥床したときには身体の突出となり、部分圧迫を受けることになります。図1に、硬いマットレスに臥床した際の全身体圧の状態を示しました。

図1 身体の構造と体圧と褥瘡の関係

図1 身体の構造と体圧と褥瘡の関係

図1 身体の構造と体圧と褥瘡の関係

図1 身体の構造と体圧と褥瘡の関係

図1 身体の構造と体圧と褥瘡の関係

 部分圧迫は、微小血管の閉塞をもたらし、血流低下を招きます。血液は酸素と栄養素を運ぶため、細胞死・組織障害に至り褥瘡発生となります。そこで、局所に持続する圧迫が加わらないようにするために行うのが「体位変換」です。
 これまで長い間、「体位変換は2時間ごと」とされてきました。これは、1977年に東京都老人総合研究所・東京都養育院附属病院が出版した『褥瘡-病態とケア-』という書籍でそのように示されたからです。そこには「局所の圧迫を避けるため、2時間毎のめやすで体位変換をすることが大切である。」と記載されています。欧米での実験結果でも同様のめやすが示されています。有名なのはKosiakの研究で、ネズミのハムストリングに9.3kPaの圧力を一定時間かけ続けたところ、2~3時間後に変化が現れ始めたとされています。
 しかし昨今では、この2時間には明確な根拠がないとされ、最新の『褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)』では、以下のように「4時間をめどとすること」が明示されています1

CQ12 高齢者に対する褥瘡の発生予防のために、体圧分散マットレスを使用したうえでの4時間をこえない体位変換間隔は有効か?

推奨文 高齢者に対する褥瘡の発生予防のために、体圧分散マットレスを使用したうえでの4時間をこえない体位変換間隔を提案する。

推奨の強さ 2B

注1

 また、2009年のNPUAP/EPUAP合同ガイドラインでは、「体位変換の頻度は、患者の組織耐久性や活動性のレベル、全身状態、治癒の目的、皮膚の状態のアセスメントによって決定する」と記載されており、患者の状態や状況、使用されている体圧分散寝具等から考慮しなくてはならないことが示されています。体位変換は、ケアを実施する側の負担にもなるため、画一的なケアではなく、状態・状況に応じた観察に基づく柔軟な判断が必要であることを示しています。

注1

 『褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)』では、以下のように「推奨の強さ」を規定しています。『ガイドライン(第4 版)』とは異なっていますので注意してください。詳しくは、「本特集における「エビデンス」の考え方」をご覧ください。
 推奨は、推奨の強さとエビデンス総体のエビデンスの確実性からなる。推奨の強さは、「行うことを推奨する(強い推奨):1」「行うことを提案する(弱い推奨):2」「行わないことを推奨する(弱い推奨):2」「行わないことを推奨する(強い推奨):1」「推奨なし」に分けられる。
 また、エビデンス総体のエビデンスの確実性(強さ)は、「 A(強):効果の推定値が推奨を支持する適切さに強く確信がある」「B(中):効果の推定値が推奨を支持する適切さに中等度の確信がある」「C(弱):効果の推定値が推奨を支持する適切さに対する確信は限定的である」「D(とても弱い):効果の推定値が推奨を支持する適切さにほとんど確認できない」となっている。

引用文献

  1. 日本褥瘡学会編:褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版.照林社,東京,2022:34.

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