最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part6 褥瘡(じょくそう)を治すための基本的な知識難しい「ポケット」の治療をどう行う?

2023年2月更新(2016年6月公開)

 治りにくい褥瘡の代表的なものの1つがポケットのある褥瘡です。ポケットというのは「皮膚欠損部よりも広い創腔」のことで、皮下に思いのほか深く広く広がっている場合があります(図1)。

図1 ポケットのある褥瘡

図1 ポケットのある褥瘡

坐骨結節部の褥瘡治療目的で入院。直線はポケット切開を行う際のガイド

図1 ポケットのある褥瘡
図1 ポケットのある褥瘡

ポケット切開術翌日の状態。黒色部位は、電気メスにて止血した跡

図1 ポケットのある褥瘡
図1 ポケットのある褥瘡

ポケット切開10日後

 ポケットは発生メカニズムから大きく2つの型に分けられます(表1)。ポケットがある褥瘡では、ポケットがどのくらいの範囲に広がっているかをみることが最初のアプローチになります。ポケットのサイズはこれまで鑷子や綿棒などを使って測っていましたが、現在はP-ライトのような機器を使って測ることが勧められています。不用意に鑷子をポケット内に入れるとポケット内部の肉芽組織を傷つけてしまう恐れがあるからです。そのため、出血したり痛みを生じたり、肉芽の増生を阻むこともあります。P-ライトを用いてポケットを計測する方法を図2に示します。

表1 ポケットの分類

初期型ポケット 深い褥瘡が発生した際に厚い壊死組織が時間の経過とともに融解し、排出された後にできるポケット
遅延型ポケット 褥瘡の治癒過程のなかで外力が加わったための組織にずれが生じ、これに圧と骨突出の複合力で壊死やポケットが形成される

図2 P-ライトを用いてポケットを計測する方法

入院翌日ポケット切開

図2 P-ライトを用いてポケットを計測する方法

透過したライトが皮膚を通して明点になりポケット内腔が示される

P-ライト(株式会社ベーテル・プラス)

図2 P-ライトを用いてポケットを計測する方法

(写真提供:大桑麻由美)

 保存的治療でポケットが改善しない場合は、外科的にポケットを切開するか陰圧閉鎖療法を行います。それと同時に、圧迫・ずれ力を排除します。ポケット内に壊死組織が残っている場合は、外科的デブリードマンを行い、洗浄を十分に行って創面をきれいにします。外用薬を使用しての化学的デブリードマンも有効です。ブロメラインを用いて化学的デブリードマンを行うときは、周囲の健常な皮膚を白色ワセリンで保護します。ポケットにおいては、感染を引き起こすことが多いため周囲皮膚の発赤などに常に注意することが必要です。
 『褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)』では、ポケットを有する褥瘡には、滲出液が多い場合は、アルギン酸塩、ハイドロファイバー®、アルギン酸Agなどのドレッシング材を用いてもよいとされています(推奨度C1)。ドレッシング材を使用する際に注意したいのは、ポケット内に深くドレッシング材を挿入しないこと、そして創を圧迫するような使い方をしないことです。

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