最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part5 褥瘡(じょくそう)を防ぐために重要な体圧管理体圧管理とマイクロクライメット

2023年2月更新(2016年6月公開)

 これまで褥瘡発生には、体圧・ずれ・摩擦の3要因が影響すると言われていましたが、2010年にInternational working groupが、International REVIEWにおいて、褥瘡予防は、pressure、shear、friction、maicroclimateから検討することが重要と指摘しました。それを受けて、2014年度版NPUAP/EPUAP/PPPIAによる国際ガイドラインで、新たな褥瘡予防として「マイクロクライメットの管理」が追加されました1
 マイクロクライメットは「微気候」とも言われ、「皮膚局所の温度・湿度」のことを指します。臥床している場合では、皮膚と接触するすべての面はマイクロクライメットに影響することになるため、体温を上昇させないことや、湿度を透過させて下げることが必要になります(図1)。

図1 褥瘡の進行における各種要因

図1 褥瘡の進行における各種要因

図1 褥瘡の進行における各種要因

Wounds International:世界創傷治癒学会(WUWHS)コンセンサスドキュメント: 褥瘡予防用ドレッシング材の役割. Wounds International 2016:19 付録2. より引用

 では、なぜ皮膚局所の温度上昇が課題となるのでしょうか。車椅子クッションの実験から、以下のことが指摘されました2

  • 体温が1℃上昇すると組織の代謝が10%亢進する
  • 代謝が亢進した状態で外力によって部分圧迫が加わり虚血になると、酸素や栄養素の供給が不足し、組織損傷が起こりやすくなる
  • 皮膚局所の温度上昇は、発汗にも影響をあたえ、皮膚が湿潤し、皮膚の浸軟をもたらすことになる
  • 浸軟した皮膚とは角層がふやけて白く見える状態で、角層のバリア機能や組織耐久性の低下となり、皮膚損傷=褥瘡となりやすい状態となる

 そのため、体温を上昇させないことや、湿度を下げることが課題になります。具体的には、マットレスや体圧分散寝具の構造、使用されるカバーの素材や構造に留意することが必要です。マットレスの構造では、ダクトをつけて送風し温度上昇を抑える機能を付加させたりすること(図2)、さらに熱がこもりづらい素材を用いたマットレスなども考案されています(図3)。ケアでは、発汗した場合にはすぐに拭き取ることや、汗等を速やかに拡散させる素材の寝衣や寝具も開発されています。体位変換そのものが通気や換気の効果にもなります。
 褥瘡発生に影響する4つ目の重要要因としてマイクロクライメットに対する対応は重要であり、ケアによる対応もある程度可能なため、注視していかなくてはなりません。

図2 ダクトをつけたマットレスの例[オスカー(株式会社モルテン)]

図2 ダクトをつけたマットレスの例[オスカー(株式会社モルテン)]

図2 ダクトをつけたマットレスの例[オスカー(株式会社モルテン)]

マットレスの足元2箇所にあるフレッシュエアダクトから、シーツを通し拡散された微弱な空気が寝床内に送り込まれ、寝床内の湿った空気と入れ替わることで「むれ」対策に効果がある

株式会社モルテン健康用品事業本部ホームページ:製品情報,特殊マットレス,オスカー.より引用
https://molten.co.jp/health/products/mattress/oscar/(2022/7/25アクセス)

図3 マットレスの構造体の例

図3 マットレスの構造体の例

引用文献

  1. NPUAP, EPUAP, PPPIA:Prevention and Treatment of Pressure Ulcers. Clinical Practice Guideline 2014:75-78.
  2. Fisher SV, Szymke TE, Apte SY, et al:Wheelchair cushion effect on skin temperature. Arch Phys Med Rehabil 1978 ;59(2):68-72.

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