Part8 知っておくと役立つ
手術療法、物理療法、局所陰圧閉鎖療法
2016年6月公開
褥瘡アセスメントに必須!改定された「DESIGN-R®2020」
ここだけは知っておきたいポイント
物理療法の1つである陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)は、創面全体を閉鎖性ドレッシング材で覆い、創面を陰圧に保つことにより創部を管理する方法です。創面は専用のスポンジで覆い、125mmHg程度の陰圧で維持します。
ガイドラインでは、「肉芽組織が少ない場合の物理療法」として、「感染・壊死がコントロールされた創には陰圧閉鎖療法を行ってもよい(推奨度C1)」としています。
褥瘡の治療では、まず「創面の整え」「滲出液の調整」を行います。具体的には不良肉芽組織を取り除き(デブリードマン)、創傷被覆材で滲出液コントロールを行って創を縮小していきます。その原則にのっとって効率よく治療を進めていく手段の1つとして陰圧閉鎖療法が行われます。その原理を簡単に図示しました(図7)。皮膚の欠損した部分にシリコンチューブを入れ、外部から陰圧をかけて滲出液を吸引します。125mmHg程度の陰圧をかけると創の血流もよくなり最も効果があるといわれています。そして、吸引によって細菌量も減少し、湿潤環境が整って、肉芽の増殖が早くなるのです。陰圧閉鎖療法を行っている場面を示しました(図8)。
陰圧閉鎖療法を行う際、エア・リークに注意することが必要です。ガイドラインには、粘着力の強い医療用絆創膏を使ってエア・リークをコントロールする方法が提示されています。
図7 陰圧閉鎖療法の原理
切手俊弘:陰圧閉鎖療法.はじめての褥瘡ケア,照林社,東京,2013:70.より引用
図8 陰圧閉鎖療法の例

切手俊弘:陰圧閉鎖療法.はじめての褥瘡ケア,照林社,東京,2013:71.より引用 (写真提供:切手俊弘)
現在、わが国で保険適用を受けている陰圧維持管理装置としては、「V.A.C. ®治療システム」(ケーシーアイ)(図9)と「RENASYS®創傷治療システム」(スミス・アンド・ネフュー)(図10)があります。いずれも保険適用によって陰圧閉鎖療法が行える期間は上限4週間と定められています。
交換頻度は48~72時間のため、処置回数も減り、患者・医療従事者の負担軽減になります。そのため、陰圧閉鎖療法は褥瘡治療だけでなく、急性外傷や術後SSI(surgical site infection)の管理、慢性の難治性創傷などにも使われています。
さらに、陰圧閉鎖療法は、在宅での使用がいっそう進められるでしょう。「ActiV.A.C.®型陰圧維持管理装置」(ケーシーアイ)(図11)は小型軽量化され充電使用時間も長くなったため携行して使えるようになりました。また2014年には、外来での使用が可能な「PICO®創傷治療システム」(スミス・アンド・ネフュー)(図12)も出され、ますます汎用性が高まったといえます。
図9 「V.A.C. ®治療システム」(ケーシーアイ)
図10 「RENASYS®創傷治療システム」(スミス・アンド・ネフュー)

RENASYS®E MAX 陰圧維持管理装置

RENASYS®GO陰圧維持管理装置
図11 「ActiV.A.C. ®型陰圧維持管理装置」(ケーシーアイ)
図12 「PICO®創傷治療システム」(スミス・アンド・ネフュー)