最新ガイドライン、DESIGN-R®2020に基づく 新まるわかり褥瘡ケア

Part1 褥瘡(じょくそう)はどうしてできる? どう治す?創傷の治し方の基本

2023年2月更新(2016年6月公開)

1.キズはどうやって治る?

 正常なキズ(創傷)はどのような経過を経て治るのでしょうか。一般的に、受傷から治癒までは、以下のステージで経過するといわれています(図1)。

  1. ①出血凝固期(止血期):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期。
  2. ②炎症期:炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期。
  3. ③増殖期:線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期。
  4. ④再構築期(リモデリング期):コラーゲン産生が十分になって線維芽細胞が減少して瘢痕が軽微になる時期。表皮細胞が遊走して創が収縮・閉鎖される。

 これらの経過を順調に進めば、創傷は治るといわれています。褥瘡も「創傷」ですから、これらのステップを確実に踏んで治癒を促進することが必要です。治りにくい褥瘡は、こうした治癒過程のどこかに障害が出てきます。その原因は循環動態であったり感染や栄養などの全身状態であったりと、非常に複雑です。さまざまな因子を的確に判断して、トータルなアプローチを行っていかなければなりません。

図1 創傷の治癒過程

図1 創傷の治癒過程

市岡滋:創傷治癒の臨床.金芳堂,京都,2009:5.より引用

2.慢性創傷はどうやって治す?

 慢性創傷は、図1の①~④の治癒過程のどこかが障害されて治癒が遅れたものです。特に褥瘡では、②炎症期が遷延化・慢性化している場合が多いといえます。②炎症期から③増殖期になかなか移行しないのです。つまり、「線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される」過程に障害が起こるわけです。増殖因子・サイトカイン組成の変化による創傷治癒障害が起こっていたり、細胞外マトリックスの異常が起こっている場合です。本来、サイトカインが活性化していれば傷は治るのですが、サイトカイン活性が低下するということは、栄養状態が悪かったり何らかの原因で全身状態が落ちていたりすることが考えられます。
慢性創傷が②から③の状態に移行して治癒段階に移るためには、「創面環境調整(wound bed preparation(WBP):ウンド・ベッド・プリパレーション)」が必要ですが、詳しくは「創傷治療の基本:創面環境調整(WBP)とTIME」の項で述べます。

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